Insight Animation

目についたアニメを見て、あくまで個人的な視点でレビューするブログです。

【映画】「天気の子」レビュー

 

Webページ:

映画『天気の子』公式サイト

 

 

君の名は。」で一躍有名監督になった新海誠監督の、2019年の最新作。

やたらと新宿近辺を舞台にしたがる監督だが、本作も重要な場面は新宿付近が舞台である。

 

ストーリー

 

異常気象で雨ばかりが続く日本。

東京都の離島に住んでいた森嶋帆高は、島での暮らしに嫌気がさし、単身東京の新宿へと家出をしてきた。

東京への船の中で知り合った須賀圭介のもとで暮らしていたが、ある時、天野陽菜という少女と知り合う。

その天野陽菜は、空に祈りを捧げると、短時間かつ局所的ではあるが晴れにすることができる、100%の晴れ女だった...。

 

本作は、前作「君の名は。」が大ヒットし知名度が上がりに上がった、新海誠監督の映画である。

...が、前作が気に入ったからという理由で、前作同様の作風を期待して本作を見ると、確実に痛い目を見る。

前作はかなり一般ウケする作風だったのに対し、今作は明らかにベクトルが違う。

 

ファンタジックで過酷な運命に囚われたヒロイン。

そのヒロインを救うため、社会にさえ抗う主人公。

そして世界か、ヒロインか?という選択。

選択の結果で世界を変えてしまう、いわゆるセカイ系の作風。

そして前作以上にセクシュアルな要素が増えてる印象。

こういう言い方はしたくはないが...明らかにオタク要素が増えている。 

ぶっちゃけ、よくこんな映画がヒットしてるもんだ、と思う。

 

ここまで否定的な書き方をしているが、わたしは本作が好きだ。

なぜなら、わたしもオタクの端くれだからである。

本作を形容するのに、よくゼロ年代のエロゲっぽいと言われる。

実際、本作を見た今では、わたしもそう思う。

ゼロ年代のエロゲをいくつかプレイした経験があり、そしてそれらが好きなわたしが、本作を好きにならないはずがない。

 

そして、だからこそ心配になるのが、こんなのがヒットして大丈夫なのだろうか?ということだ。

ましてや、わたしが劇場に足を運んだときには、かなりの子連れ(しかも小学生以下っぽい)がいた。

「これを親子で見て大丈夫なのか...?」と思わず余計な心配をしてしまった。

まぁ、そのお子さん方は「おもしろかったー」とか言ってたので、もしかしたら杞憂なのかもしれない。。。

 

さて、前置きが長くなったが、本作のストーリーのいいと感じたところと、気になったところを書く。

 

いいと感じたところ。

ひとつは、10代の年頃の考え方や趣向が、ちゃんとストーリーに含む形で描けていたところだ。

例えば、ヒロインの陽菜が怪しげな男たちに連れて行かれそうになってるのを見て、迷わず助けに入る。

...が、大人相手に大立ち回りするわけではなく、かなり危なげに状況を切り抜ける。

よくある最近のアニメ作品だと、危機っぽい状況でもあまり緊迫感がないとか、あるいはあっさり事を終わらせてしまうということが多い。

 

その点、このアニメでは主人公の帆高はカッコいいんだけど、ちゃんと年相応にカッコ悪くもある。

それ以外にも、帆高と陽菜に関して、そういった年相応らしさを感じられるシーンがいくつもあるのだ。

それがちゃんと描けてるアニメは最近少ない...。

 

もうひとつが、10代の少年少女である主人公とヒロインだけでなく、大人視点の会話もちゃんと描いていることにある。

本作では、大人サイドのキャラクターとして、須賀圭介と須賀夏美が出てくる。

この2人の会話が、主人公たちの会話の内容と明らかに年齢的な差異がある。

しかも、それにそこそこの時間を取っている。

それなりに歳を取ってしまった自分だが、この2人の会話がとても身近に感じられた。

 

そして後半になるに連れ、そういった大人サイドのキャラクターが活躍するうように、ストーリーがうまくまとめられている。

そのため、よくあるセカイ系と違って、ちゃんと大人でも楽しめる内容になっているのだ。 

もしかしたら、そういった要素によって、単純なセカイ系とは一線を画しているのかもしれない。

 

 

一方で、気になった点...本当に些細なことだが。

中盤まで、「ストーリーがどこに向かっているのか?」「主人公は何を目的にしているのか?」が観客に伝わりづらく、いまいち本編に感情移入しにくいことだ。

序盤の帆高の目的は「ひとりで東京で生きていくこと」である。

...が、120分近い映画の序盤の目標としては、いまいち地味である。

 

中盤以降、陽菜のために帆高が奔走するようになってからは、一気に画面に引き込まれるようになる。

が、序盤はなかなかそうはいかなかったな、と感じた。

それでも、演出で観客に飽きさせないように工夫が感じられるのが、本作のまた評価すべきポイントかもしれない。

 

 

演出

 

言うまでもなく、背景は文句なしに美しい。

特に、「雨が降る描写」「雨が宙に浮き、空へ逆流する描写」「空を飛ぶ(と表現していいのか?)シーンの空の描写」は一級品だ。

これらだけでも、本作をみる価値はある。

 

そして、新宿を含めた現実世界の描写もまた、素晴らしい。

聖地巡礼好きの心を思い切り掻き立ててくる。

残念ながら、ストーリーのキーとなる代々木の廃ビルはもうすぐ取り壊しになるそうなので、興味があるのであれば早めにいく必要がある。

 

あとは、「君の名は。」の時にも見られたが、ストーリー的に省略してもいい箇所をテンポよく画面切り替えをする手法だ。

本作では、帆高がライターとして仕事をこなしていくシーンで用いられていた。

これもまた、上記の序盤で飽きさせない工夫のひとつだと感じた。

 

 

音楽

 

前作に引き続き担当しているRADWIMPSの劇伴が、とてもマッチしている。

特に、重要なシーンで流れるボーカル入りの曲は素晴らしい。

逆に曲を聴いた場合に、本編のシーンや盛り上がりが想起される。

これ以上にないほど素晴らしい劇伴だと思う。

映画を見て気に入ったのであれば、RADWIMPSのアルバムを入手して後悔はないはずだ。

 

 

個人的に刺さったシーン

 

陽菜が帆高からもらったプレゼントを取りこぼしてしまうシーン。

帆高が、そのプレゼントを見つけてうろたえるシーン。

そして、須賀圭介が刑事と事務所で会話するシーン。

最後に、帆高が陽菜を助け出すシーン。

いずれも、キャラクターの心理描写がちゃんと表現できてる、印象的な場面である。

 

一方で、力入ってるなーと感じたのが、雷でトラックが爆発するシーンである。

雷が落ちた瞬間のトラックの破砕の表現だが、妙に力が入ってて感心したものだ。

 

 

人に勧められるか?

 

5点中3点。

決して悪い作品ではない。

ただ、上映中の今、「『天気の子 』っておもしろいの?」と質問された場合に、なんと答えるべきか悩むのだ。

おそらく、その相手がどんな相手かによって答えは変わる気はする。

 

「賛否両論らしいね、オレは好きだけどさ」

「『君の名は。』ほどすげーおもしろい!って映画じゃないかな」

 

こんなところだろうか。 

君の名は。」は明らかに誰にでもウケるエンターテイメントとして完璧だった。

が、この「天気の子」は明らかにベクトルが違う。

少なくとも、「君の名は。」みたいなのを期待してる人にはちょっと勧められない。

 

ここまで読んでも、「やっぱり見てみたい」と思うのであれば、多分後悔はしないと思うが。

 

 

【映画】「この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説」レビュー

 

公式Webページ:

映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説 公式サイト

 

1期レビュー:

【アニメ】「この素晴らしい世界に祝福を! 」レビュー - Insight Animation

 

 

暁なつめ氏のライトノベルが原作のアニメ。

すでに1期、2期、OVAと製作されているアニメの、その劇場版である。

このレビューではあくまで劇場版のみを対象とする。

 

なお、視聴時期の関係上、2期を対象にしたレビュー投稿はまだしていない。

いずれは投稿するつもりではあるが。

ただし、きちんと視聴(それも何回も)した上で劇場版を視聴している...ことは書いておく。

 

 

ストーリー

 

カズマたちの元に、ゆんゆんがある手紙を持って駆け込んできた。

その手紙とは、紅魔族の長であり、ゆんゆんの父親からの、紅魔の里の危機を知らせる手紙だった。

里へ帰ったゆんゆんを追いかけて、カズマたちも紅魔の里へ向かうが...。

 

本作では、これまで断片的にしか語られたり、あるいは明かされてこなかった、紅魔の里を中心に描かれる。

これまで紅魔の里の人間といえば、めぐみんとゆんゆんしか出てこず、どんな里なのか?どんな種族なのか?と気になるところであった。

しかしまぁ想像通りというか、なかなか頭のおかし...個性的な種族であることは確かなようだ。

本作には大きな敵が2人出てくるが、その発祥がまさかの...。

いや、とても紅魔族らしいと感じた。

 

そして、その紅魔族自体の出自について。

まさか、あのキャラがここでまた出てくるとはまったく予想してなかった。

 

それら含め、全体的にはストーリーはとてもおもしろかった。

上映中もところどころで笑いが漏れていたのも納得だ。

 

しかし...ひとつツッコミを入れるとすれば、敵の倒し方がマンネリっぽいところである。

このアニメというかコンテンツの気になるところのひとつが、ところどころでマンネリっぽさというか、前と似たような流れが出てくること、である。

やはりこれまでとは違ったアイディアや方法で倒さないと、おもしろみが減るというものだ。

それにしても、なんだかんだでカズマは自爆が好きなんだな。

 

 

演出

 

これまでと同じで、特筆した演出はなし。

また、めぐみんの爆裂魔法にやたら力が入ってるのも相変わらず。

 

この劇場版ならではという意味では、紅魔族が多く出てくるので、彼らの魔法の描かれ方に力が入ってたなという印象だ。

もうひとつは、めぐみんの部屋に、カズマとめぐみんと2人きりで閉じ込められたシーンである。

その時のカズマのセリフと合わせて、笑わずにはいられなかった。

 

 

音楽

 

本編と同じく、ファンタジックな劇中曲が今回もストーリーをバックアップしていた。

ちなみに主題歌は、個人的にはまだあまり好きになれてない。

アニメ本編の曲のほうが好きだった。

 

 

個人的に刺さったシーン

 

ひとつは、敵の親玉に名前を問われるカズマのシーン。

その受け答えの内容がいかにもカズマらしく、劇場でも笑いが起こったシーンである。

そういうキャラクターらしさが如実に現れるシーンは好きだ。

 

もうひとつが、めぐみんの部屋に、めぐみんとカズマが2人きりで閉じ込められるシーンである。

こちらもまた、カズマの心の葛藤が如実に現れ、結局欲望に負けてしまうのだが...これもまたカズマらしい。

そのあとの、カズマとめぐみんの会話もまた、いい。

 

 

人に勧められるか?

 

5点中4点。

とてもおもしろかったのだが、勧められるか?という観点だと、この点数。

 

ひとつは、これはあくまで劇場版単体で評価していること。

すでにアニメを1期、2期、OVA2つとやっているアニメなので、この劇場版単体では勧めにくい。

というより、勧められない。

 

もうひとつは、やはり先ほど書いたマンネリ感だ。

まだ書いていない2期も同様だが、ときどき「あれ、これ前と同じような流れじゃないか?」と思うことがある。

個人的には、おもしろさという観点からしてやはりマイナスをつけたい。

ともあれ、刺さったトゲのように少し気になるという程度である。

大きくマイナスというわけではない。

 

あれやこれやと書いているが、2期まで見ておもしろかったと感じるのであれば、この劇場版を見ても決して後悔することはないだろう。

続編という意味では十分すぎるほどだ。

 

 

【映画】「薄暮」レビュー

 

公式Webページ:

劇場アニメ『薄暮』公式サイト

 

 

福島県いわき市を舞台にした、音楽部の少女と美術部の少年の恋愛を描いた物語。

薄暮とは、夕暮れの黄昏の時間帯を指す。

 

 

ストーリー

 

いわき市に住む女子高生・小山佐智は音楽部に所属し、文化祭に向けて毎日練習に明け暮れていた。

佐智は、練習後にひとりで田園の中にポツンと立つバス停に行き、その風景と薄暮の太陽の光を見るのが好きだった。

毎日そのバス停に通っているうち、絵を書く高校生・雉子波祐介と出会い...。

 

本作は、薄暮の時間帯と、いわき市の美しい風景のなかで、たまたま知り合った男女の高校生が織りなす、恋愛物である。

ただし、その恋愛の内容はよくある普通の恋愛である。

特筆して、なにか大きな出来事があるわけでない。

もちろん、つまらないということはない。

初々しい高校生のカップルのやりとりに、少々うらやましさを感じる。

 

ただ、欲を言えばキャラの深掘りがもっと欲しいとは感じた。

どういった生い立ちなのか、音楽or絵画を始めたキッカケについて、より深掘りしたりといった内容が少し物足りない。

とはいえ、1時間に満たない尺では難易度が高かったか。

 

それはさておき、本作はそんなストーリー以上に大事な物がある。

 

 

演出

 

それは、舞台となるいわき市の風景である。

特に、バス停がある田園風景と、そしていっしょに描かれる薄暮の太陽の光とのマッチが美しい。

「絵画を描くように描くことを意識した」「実際の写真は見たが、実際の場所には行かなかったことが逆によかったかもしれない」という話を聴いたが、その通りかもしれない。

写真や実際の風景と同じように描くのでは、アニメでやる意味はない。

アニメにはアニメにしか描けない、あるいはアニメだからこそ描ける物があると思う。

それがうまく作用してると感じた。

 

いっぽうで気になる部分はいくつかある。

ひとつは、シーンの切り替えである。

序盤だが、10秒近く止め絵のような状態で演奏が続いたかと思うと、いきなり画面が切り替わるシーンが存在する。

そういう演出なのだ、と言われればそれまでだが、引っ掛かりを感じなかったといえば嘘になる。

そのほかにも、時々気になったところがあった。

 

ふたつめは、祐介のぎこちなさである。

同世代の女の子を前にして、自然体でいるのもどうかと思うが、どうにも不自然だなぁと感じる言動、態度が見られる。

これもまた、そういった演出なのだと言われれば...。

 

みっつめは、佐智が寝付けなくて、パジャマを脱いで寝るシーンである。

あの演出は必要だっただろうか...。

本作は基本的に硬派な内容である。

最近の萌えアニメとはほど遠い。

そのため、あのシーンだけ妙に浮いて見えるのである。

個人的にはなくてよかったのではないか?と感じた。

 

 

音楽

 

本作では、景色と薄暮についで主役となっているのが音楽である。

佐智はヴァイオリニストであるため、ヴァイオリンの演奏シーンがたびたび出てくる。

中でも、薄暮の風景の中で演奏するシーン、その背中はとても印象的だった。 

また、そこで演奏された「朧月夜」がとてもマッチしていたように感じた。

 

 

個人的に刺さったシーン

 

最初にバス停と薄暮が登場するシーン。

そして、薄暮の風景の中で佐智がヴァイオリンを演奏するシーン。

さらに、文化祭後に佐智と祐介が話すシーン。

いずれも、演奏やキャラクタと、背景と薄暮がとても印象的にマッチしていた。

 

いっぽうで、「おっ!」と感じたのは、佐智の自宅のテレビで、「本日の放射線量予報は...」という放送が流れていたシーンである。

わたしは震災後に福島に行った事がなかったので、あのような放送が日々流れていることなど初めて知った。

ああいった演出は福島が舞台であること、ならではである。

そういった細かな描写は個人的に好みである。

 

 

人に勧められるか?

 

5点中3点。

監督のネームバリューもあり、安易に勧めにくいのは否定できない。

また、ストーリーが突出しておもしろいわけでもないので、誰にでも勧められる、ということもない。

 

だがしかし、確実にオススメできる趣向の人種がいる。

それは、聖地巡礼が好きで、それを趣味とする人たちである。

これはもう間違いない。

 

劇中で、「1枚1枚絵画を描くように描くことを意識した」という風景と薄暮は、実際にはどのように見えるのだろう?

聖地巡礼を趣味としている人間であれば、これはもう気にならずにはいられない。

劇中に登場する風景はいずれも実在する場所である、とのことなので、巡礼しがいはある。

 

しかし、聖地巡礼好きの身としては、やはりキャラの深掘りは欲しい。

個人的な趣向ではあるが、聖地巡礼において、ただ美しい風景を見るだけを目的とするのはおもしろくない。

そのキャラがこれまでどんな風な生い立ちを経てきたのか?

どんな風に日々を生きているのか?

どんなことを感じて、考えて暮らしてるのか?

そういった人物像に想いを馳せることができるのが、聖地巡礼の魅力のひとつだと考える。

本作の内容では、そういった面が少し物足りない。

 

 

その他備考

 

この監督の作品であるため、あえて書くことにする。

この世の中には、理由は分からないが、製作者や発信者の人柄とその制作物や意見の内容を分けて評価しない、あるいはできない人たちが案外多い。

本作の山本監督と、本作の評価もそうである。

 

実は、わたし自身は山本監督という人柄は決して好きではない。

Twitterでのやりとりを見ていると、炎上や嫌われる理由もやむを得ない、と感じてしまう。

※人間関係のやりとりとはいうのは、タイミングや状況、心理面が各個人で異なるため、決して一筋縄ではいかないものではあるが。

 

それはさておき、いっぽうで山本監督の作るアニメはけっこう好きなのである。

涼宮ハルヒの憂鬱」も何回見たか分からないし、「Wake Up, Girls!」のアイドルの光だけでなく闇にも焦点を当てたストーリーはとても気に入っている。

 

本作もそうだ。

これまで気になるところにあれこれとツッコミを入れているものの、本作は個人的に好きだ。

映画館で視聴後に原作小説を買ってしまったし、いずれは福島へ聖地巡礼へ行きたい。

 

なにが言いたいかというと。

ひとつは、アニメ監督自身の人柄の評価と、そのアニメ監督が作る作品の評価は完全に分けて考えるべきだ、ということである。

完全に分けることができないと、作品の評価は監督の人柄の評価に引きずられる。

 

もうひとつは、山本監督が作ったアニメだからと本作を見ないのは、とても惜しいということである。

山本監督の人柄を理由に本作を見ないこと。

あるいは先に書いたように作品の評価が人柄に引きずられてしまうこと。

それらも惜しいと言わざるを得ない。

確かに気になるところはあるが、それでも捨て置くには惜しすぎる作品だ。

 

ここまで読んで気になったのであれば、ぜひ一度鑑賞してほしい。

 

 

【アニメ】「TARI TARI」レビュー

 

Webページ:

アニメ「TARI TARI」公式サイト

 

 

P.A.WORKSのオリジナルアニメ。

神奈川県江の島近辺にある、高校とその合唱部が物語の舞台。

 

 

ストーリー

 

声楽部に所属していた宮本来夏は、以前した失敗を理由に、もう声楽部では歌わせてもらえないことを言われ、声楽部から退学する。

そして、歌う場を用意するため、友人の沖田紗羽、同じクラスで元・音楽科所属の坂井和奏を誘って、合唱部を設立する。

しかし、それは一筋縄でいかず。。。

 

全13話のうち、最初の10話で2話ずつ、合唱部の面々1人1人にスポットをあて、それぞれのキャラクター性を丁寧に描く。

そして、最後の3話でクライマックスに向け、大きな障害に挑む。

その裏で、合唱部自体のトラブルへの対処など、様々な展開が少しずつ進む。

 

さすがのP.A.WORKSと言うべきか、とても丁寧にストーリーを描いている。

ちゃんと心理面に着目し、それぞれの心の整理をつけるまでの過程がちゃんと言及されている。

そのため、ちゃんとキャラクターに人間味があり、とても魅力的に見える。

このアニメの最大の魅力のひとつである。

 

それにしても、学校や部活のトラブルというか、最大の障害=学校の廃校、というのはさすがに飽き飽きしないでもない。

...とはいえ、じゃあ他に主役の足場を揺るがすような事件といえば他に何があるか?と言われれば...何も思い浮かばないのだが。

 

 

演出

 

堅実な描写であり、派手だったりクセのある演出はほぼない。

ストーリー展開と風景の描写が十分素晴らしいため、そんなもの必要ないというのもある。

ストーリー展開は前述のとおり。

風景の描写もかなり細かく、そして美しいため、聖地巡礼したくなるアニメであることに間違いない。

このアニメのふたつめの魅力がこれだ。

特に、海と江の島の自然の風景がいい。

それだけでも十分見る価値がある。

 

 

音楽

 

合唱がテーマのアニメであるため、音楽にも力が入っている。

キーとなる合唱曲が2曲出てくるが、いずれも声優の歌声がしっかりベースがあるため、とても聞きごたえがある。

一方で、ストーリーにも「音楽とはなにか?」「なぜ、音楽に触れるのか?」といった内容に言及されている。

合唱がテーマになっていることがよく分かる。

音楽自体もそうだが、そういったテーマ性がきちんとストーリーに絡んでいる。

それが、このアニメのみっつめの魅力だ。

 

 

個人的に刺さったシーン

 

最終話の音楽劇のシーン、そして紗羽が馬に乗って学校に駆けつけるシーン。

普通に考えれば、馬に乗って一般道を走るなど、注目を浴びてしかたがないことなのだが...。

しかし、それでも一刻も早く学校に着きたい、着かなければならないと発起し、なりふり構わず向かう。

とても青春らしい、若さと勢いが感じられるシーンで、とても好きだ。

 

 

人に勧められるか?

 

5点中5点。

もう文句なしに人に勧められる。

やはり個人的には、生い立ちを含めた丁寧な人物描写と、そして江ノ島近辺のキレイな景色を楽しめるのが魅力である。

そして、それらをベースにした、とても青春らしさを感じられるストーリー。

自分はあんなになにかにまっすぐに、直情的に打ち込むなにかはなかったので、とてもまぶしい。

たった13話で終わってしまうのがなんとも惜しい。

 

実は、電子書籍で10年後の続編がリリースされているのである。

これは読むしかない。

残念ながら現在リリースは中断しているようだが、すでにリリース済みの内容だけでも十分に楽しめる。

アニメを見て、いいと思ったのであれば、そちらを見るのをオススメしたい。

...っていうか、早く続きが読みたい。。。

 

 

 

 

【アニメ】「恋と嘘」レビュー

 

公式Webページ:

TVアニメ「恋と嘘」公式サイト

 

 

ムサヲ氏原作の恋愛マンガが原作。

原作は未完で、まだ連載中。 

 

 

ストーリー

 

超・少子化対策基本法(通称:ゆかり法)により、政府から送られてくる政府通知で将来の結婚相手を決められてしまう世界。

主に、自分が小学生から好きだった相手と、政府通知の相手とで気持ちが揺れる主人公を中心に描かれる。

また、政府通知にまつわる謎や思惑が行き交う、ミステリチックな要素もある。

 

先に書いた通り、本作は未完で連載中のマンガが原作である。

そのため、アニメもほぼ原作準拠でストーリーが進行するものの、最終話は...身も蓋もない言い方だが、中途半端なところで終わってしまう。

 

では、このアニメの成否はどこで判断するかというと、アニメを見て原作を読みたいと思わせられるか?だと思う。

さて、本作はどうか?

自分はアニメの前に原作を一通り読んでいたので、原作びいきになってしまうが...本作に興味を持った視聴者であれば、まず続きが見たくなると思う。

 

原作未完のアニメには、いくつかのパターンがある。

最後まで原作準拠。

途中からアニメオリジナルになるが、続きを匂わせて終わらせる。

途中からアニメオリジナルになり、最後までアニメオリジナルで完結させる。

 

それぞれ一長一短あるが、本作は2番目に該当する。

ストーリーが原作にならって、堅実に作られているのだ。

原作ファンであれば、見て後悔はないはず。

 

 

演出

 

原作から浮いたような演出は抑え気味。

監督によって個性が出てしまう部分もあるところだが、本作はそのあたりも堅実だ。

そのあたり、やはりアニメを見て原作を読んでね!という意図が読める。

原作とアニメで行き来しやすい、親切な仕上がり。

 

 

音楽

 

個人的にはOPが刺さった。

そもそもフレデリックがまぁまぁ好きというのもあったしね。

元が女性向けマンガでもあるので、フレデリックを選ぶのはなかなかいいセンスだと思う。

サブカル女子にもウケそうだし、一方でポップなバンドなので一般ウケもよさそう。

 

 

個人的に刺さったシーン

 

ひとつが、講習を受けてネジと莉々奈が同じ部屋で一晩を過ごすシーンである。

まだ、莉々奈がネジを好きなのかどうかを自覚できていない様子が、とても初々しい。

 

一方で、ここまで書いてて矛盾するようだが、印象的なのは仁坂がネジに「僕に隠し事してるよね?」と詰め寄るシーンである。

好きという気持ちを隠さなければならない心苦しさがよくよく伝わるシーンだ。 

その気持ちに性別は関係がない。

...言っておくが、わたしにそっちの気があるわけではない。

 

 

人に勧められるか?

 

5点中4点。

恋愛ものが好きな人にはオススメ。

原作アニメの改変でときどき話題(炎上ともいう)になることもあるケースが多い中、原作アニメとしては十分すぎる完成度。

個人的には先が気になるところなので、ぜひ2期もやってほしい。

 

【アニメ】「初恋限定。」レビュー

 

公式ページなし。

初恋限定。

インターネットアーカイブ

 

 

河下水希氏原作のラブコメマンガが原作。

原作は完結済みだが、4巻とかなり短い。

 

 

ストーリー

 

序盤では、中学生と高校生の男女が、毎回オムニバス形式で恋愛模様が描かれる。

後半になるにつれ、登場人物同士のつながりが明確になっていき、三角関係がいくつも重なったような人間関係が描かれる。

終盤では、自分の未熟さに失望した中学生男子が逃避行を繰り広げる。

 

本作は原作ありのアニメである。

恋と嘘」のときは、原作が未完であったため、「アニメを見て原作を読みたいと思わせられるか?」が成否を分けた。

今作は、アニメになった時点でマンガが完結していた。

ではこの場合はどうなるか?というと、原作ファンをいかにハマらせることができるか?が成否を分ける、と考える。

 

で、本作はどうか...。

基本的には原作準拠ではあるのだが、ストーリー展開などが原作と比較して、エロや暴力シーンが抑えめになっている。

のだが、それが原作の魅力を半減させ、勢いを失わせてしまってる。

特にその最たるが、バレンタインの話の結末部分である。

 

河下水希氏のマンガといえば、不条理なぶっ飛んだ展開がときどき入って、それが原作の勢いを加速させている、と自分は考えている。

...が、あの結末ではそれが感じられない。

 

とはいえ、途中のストーリー展開、終盤の結末など原作で必須なところは概ね抑えているので、原作を知らずに見たら違和感はない。

が、先に書いた通り、本作の成否は原作ファンをハマらせられるかどうかであるため、その点は失敗してると言わざるを得ない。

 

 

演出

 

先に書いた通り、演出もエロと暴力シーンは抑え気味である。

原作ファンとしては消化不良気味。 

 

 

音楽 

 

OPが当時勢いのあった声優ユニット、スフィアである。

個人的にはそこまでハマりきれなかった。

 

 

個人的に刺さったシーン 

 

やはり、終盤の中学生3人の逃避行のシーンじゃないだろうか。

あれこそ、まさに青春と若さの塊である。

だいぶ大人になってしまった自分は、あのシーンを見てるだけでまぶしい。

 

 

人に勧められるか? 

 

5点中2点。

原作好きの身でもちょっと勧められない。

ましてや、原作を見たことがない人には。。。

まぁ、原作好きとしてはアニメになっただけでありがたい、というものではある。

しかし、自分だったら原作を勧めるところ。

 

【アニメ】「この素晴らしい世界に祝福を! 」レビュー

 

公式ページ:

映画 この素晴らしい世界に祝福を! 紅伝説 公式サイト

※2期、劇場版を含む

 

 

暁なつめ氏のライトノベルが原作のアニメ。

原作は未完で刊行中。

このレビューではあくまで1期のみを対象とする。

 

 

ストーリー 

 

現代日本で引きこもりオタク生活を送っていた佐藤カズマだが、ちょっとした理由で死亡してしまい、異世界転生され魔王討伐に挑むことになる。

転生の際、持っていけるアイテムとして女神・アクアを選択するが...。

 

本作は、最近流行りの異世界転生モノである。

...のだが、本作は異世界転生モノのパロディともいうべきギャグアニメである。

異世界転生モノの王道であれば、おそらくこうなるであろうと想像できるストーリー展開をことごとく外すのである。

 

例えば、転生時のアイテムだが、通常であれば強力なアイテムが出てくるようなところである。

...が、先に書いた通り実際は女神・アクアが選ばれる。

※ちなみに、同じように転生され、実際に強力なアイテムを選んだキャラクタものちのち出てくる...のだが。

 

他にも、どこかしらで主人公の隠された才能が開花する、あるいは秘めた力が発現するなど、主人公を活躍させるスキルが出てくるもの...だが。

実際には、運がちょっといいくらいで大したスキルはない。

 

そういった、本来王道や元ネタを少し外すような作風を何と表現するかといえば、先に書いたとおりパロディなのである。

個人的に、異世界転生モノが流行りだした初期の頃に、こんなアニメが出てきたのが驚きである。

そして、パロディというのは総じてそれだけで十分おもしろい、おいしいジャンルでもある。

本作もそれに漏れず、したがってとてもおもしろいストーリーになっている。

 

一方で、キャラクターもみな魅力的である。

主人公のカズマだが、一見すればクズマと呼ばれても違和感のないどうしようもない男なのだが、ちゃんと筋は通す人間である。

例えば、後半にサキュバスの回があるのだが、クズであれば見捨ててしまうであろうサキュバスを、カズマは苦渋の顔をしながら救おうとする。

※迷わず涼しい顔で救うのではなく、苦渋の顔で救おうとするところに親しみがある、というものだ。

ゆえに、欲望に忠実であるクズでありながら、視聴者から見ればとても好感の持てるキャラになっている。

 

それ以外にも、てんで女神らしくないアクア、強力な魔法使いでありながら致命的な欠陥をもつめぐみん、女騎士でありながらこれまた致命的な欠陥を抱え、かつ性格に問題をもつダクネス...といったように、一癖も二癖もキャラばかり出てくる。

こんな内容でおもしろくならない方が不思議である。

 

 

演出

 

ストーリーが十分おもしろいためか、クセのある演出は控えめである。

そんな中で光るのが、カズマとアクアの顔芸と、そしてめぐみんの魔法である。

顔芸はこのアニメの見どころのひとつであり、見ているだけで十分おもしろい。

一方で、めぐみんの魔法発動時の演出は妙に力が入っているように感じる。

スタッフにファンがいるのか、世間的に人気があるのを把握してるのか。

公式グッズでも、めぐみんの魔法関係のTシャツだけやたら数が多いのも、その辺りが理由なのだろうか。

 

 

音楽

 

OPがノリがよく、いい曲だと感じる。

そして流れる映像もまた、世界観が十分に感じられる素晴らしいものになってると思う。

キメるところでいちいちキマらないのがこのパーティらしい。

 

一方でEDは牧歌的で、これまた印象的な曲である。

個人的に、このEDの歌詞がお気に入りである。

※好みの問題だが、こういった何気ない日常を歌った曲が好きなのである。

そしてこれまた流れる映像も、風景が主なのだが妙に力が入ってるように見える。

専門的な知識がないので申し訳ないのだが、ミニチュアチックな描写が、中世の世界観の街並みと妙にマッチしている。

 

その他だと印象的なのは、やはりめぐみんの魔法発動時のBGM。

いかにも魔法を発動すると感じさせるもの。

 

 

個人的に刺さったシーン

 

シーンというか、やはりサキュバスの回である。

とにかく揺れる。

なぜかあのシーンだけ妙にサキュバスの描写に力が入ってる。

あれは素晴らしいものだ。

 

一方で、サキュバスをかばってしまうシーンは、カズマのキャラクター性が如実に描かれており、個人的にとても気に入ってる。

理由は先に書いたとおり。

 

 

人に勧められるか?

 

5点中5点。

もう文句なしに人に勧められる。

これまで書いたとおりで、目立ったマイナスポイントがない。

そして十分すぎるほどにおもしろい設定、ストーリー展開、キャラクター。

たいていの人は見て楽しめる内容なのではないだろうか?